世界中の原石を使った、まるで彫刻のような足湯
photo @ Daici Ano
野外美術館ならではのアートと⾃然の融合
彫刻の森美術館の開館55周年を記念して、人気の足湯エリアがリニューアルされ、新たに「森の足湯」としてオープンしました。この足湯のベンチ素材として、弊社の石材を使用していただきました。
photo @ Daici Ano
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建築で使用する為の材料として調達される石のブロックは、通常20㎜から30㎜の板状にスライスされ壁面や床面などに施工されます。
今回のプロジェクトでは石材を塊の状態で石の自然な表情を生かしたデザインになっています。日本では弊社しか扱っていない稀少な石種や、ストックヤードの奥深くに眠っていた国産の大理石まで石種はさまざま。本コラムではプロセスを画像とともに追っていきます。
石の選定から加工まで
足湯のベンチ部分に石材を使用するため、躯体にスライスした石を貼る、一つの石種で全体を作るなど、さまざまな検討を行いました。
最終的にはベンチ部分に色とりどりの15種類の石を並べるデザインで進むことになりました。
そこで、石種の選定のために彫刻の森美術館さま、設計を担当されたトラフ建築設計事務所と園田慎二建築設計事務所のみなさまに関ヶ原までご来訪いただき、原石ストックヤードを見学しながら候補をしぼっていきました。
関ヶ原にストックしている約1,000個の原石ブロックたち。
ブロックはひとつ15t~30tほどの重量、世界中からコンテナ船で日本までやってくる。
原石のストックヤードは広大な敷地の中にあり、約1,000個のブロックが並んでいます。
色のバランスや石のストーリー性などを考慮しながら候補の石をピックアップしていきました。
レッドサンドストーンの原石(左)と施工されたベンチの正面(右)
独特なスプーンカットの表情をそのまま残して。
ジャッロサンタセシリアの原石と矢跡を残したベンチの足湯側(左)
ベンチの石は大小様々で、大きなものは横幅3,600mmを超え、重量は約6tとなりました。通常の機械に収まらない大きさもあり、工場の加工チームとセッティングを見直したり、加工方法を検討しながらの制作となりました。
最大寸法のイタリア産御影石ルナパール、W寸法3,600mmの大原石。
現在は調達が困難になっている。
通常の原石切断は縦切りですが、石の幅が大きすぎて機械に設置できず、横切りのワイヤーソーで時間をかけて切断していきます。
大理石、御影石、砂岩など使用する石種も様々で、それぞれの原石を専用の切断機械にセッティングして加工をおこないます。今回のデザインは石の採掘時の表情外側をそのまま生かすものがあるため、石を設置する際のバランスを調整して切断に入ります。
ジャッロサンタセシリアの原石切断。
マルチワイヤーを使用し約8時間かけて切断します。
グリーンウェーブの原石切断。
切断ブレードが摩耗するほど硬い石です。
BMカッティングソーで切断される大理石 暁サラサ
原石の切断が終わると、表面を仕上げる工程に進みます。今回のベンチは天端面を歩行することになるので、滑らない仕上としてすべて粗面に仕上げます。御影石は火を当ててバーナー仕上に。石英質の石と大理石、砂岩は砂粒を当てて表面を荒らすサンドブラストで仕上げていきます。
原石からカットされたブロックの研磨
3t超の大きな製品、厚みを揃えるために表面を研磨していきます。
製品サイズが大きいため、移動式のブラスト機を使用して職人が全体を均一に仕上げていきます。
石の小口部分を磨く加工も通常であれば専用機械で加工を行いますが、こちらも機械に入るサイズではないため、サイズアップのための治具を制作したり、手磨き職人がハンドポリシンで磨いて仕上げていきます。
ブラックマリナーチェの側面磨きのためにステージで高さを調整したポリッシングマシーン。作業者は大理石のステージの上で作業します。
石の側面を磨く手磨き職人。水をかけながら丁寧に研磨していきます。
石の裏側を小段にするため、丸鋸をピッチで走らせて割っていきます。足湯の取り合い部分29m分をすべて小段にしていきます。
ビアンコスペリオーレの材料を粗取り加工し(左)、その後はアトリエで仕上加工を行いました(右)。
一つ一つサイズが違い、石種も違うので加工ラインも別々です。順次加工が完了した製品が続々と集まってきます。加工寸法や詳細加工に間違いがないか検品を経て出荷待ちの列に並んでいきます。製品は大小さまざまですが、それぞれが2t~6tとなり、トラックでの運搬も1個/1台で運ぶものがあるほどの重量となりました。
出荷をまつ製品たち。
現場へ搬入、石の設置
工場での製品制作が続いている中、いよいよ現地に石を運んでの設置作業です。今回の施工は重量物の扱いになれている関ヶ原石材アトリエ室をリーダーとしたチームで設置を行いました。
大型のトラックで現場へ搬入し、ラフタークレーンを使って施工します。石の吊り方や道具は事前に施工チームでシミュレーションして臨みました。重量物になれたチームで手際よく石を吊って設置していきます。
位置を調整しながらゆっくりと降ろしていきます。
立上りのコンクリートと給水配管をよけて収まっています。
配管の立上りがある石は特に注意して。配管を傷つけないように慎重に。
一日に1つずつ設置されていくベンチの石たち。
水盤の中の床石(ジンバブエ)も貼りこんでいきます。湯貼前(左)と湯貼した状態(右)
photo @ Daici Ano
隣り合う石の表情の違い、仕上の違いでお互いの石を引き立てあいます。
手湯にはドイツ産ジュライエローを使用、湯の中にはアンモナイトの化石が見える。
最後に今回使用した石種を使用したベンチ台を、カフェ沿いに設置して全ての作業が完了しました。
photo @ Daici Ano
レッドサンドストーン(左)、オリーブグリーン(右)のベンチ脚。カリモク家具のヒバ集成材の天板との組み合わせ。
事故もなく無事に設置が完了して全ての石が並んだ様は壮観です。全体がひとつの彫刻作品のようなたたずまいになっています。
石一つ一つの名称や説明は彫刻の森美術館のサイト上に記載があるので、現地で足湯につかりながら産地や石のストーリーを楽しんでいただきたいです。
彫刻の森美術館の常設作品紹介サイトはこちら
足湯エリアは2024年7月27日にリニューアルオープンしています。
これから涼しい季節にはピッタリのスポットになっています。
箱根を訪れる際は美術館でアートに触れて、森を感じながら足湯に使って癒されてみてはいかがでしょうか。
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私たちの仕事
- 石材調達
- 石材加工
- 石材施工
Credits
- クライアント:公益財団法人 彫刻の森芸術文化財団 彫刻の森美術館
- 設計: トラフ建築設計事務所・園田慎二建築設計事務所
- 施工: 丸要建設
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