建築用石材の種類は?何を基準に選べば良いの?
建築物に用いられる石材の種類
建築される商業施設やオフィスビルは、天然石材を仕上げ材として使用することが多く、その材料の種類や特徴によって使用可能な部位や推奨される使用方法が異なります。
○大理石(marble)
石灰岩が地殻変動(その結果として引き起こされる地震や火山活動など)により熱変成や圧縮を受け、方解石が再結晶化してできた岩石です。色柄が多種にわたり、同一石種であっても柄の違いが大きいことが特徴です。
主な使用部位:内壁、家具天板
代表的な石種:ビアンコカラーラ、トラバーチンクラシック
○御影石(granite)
○ライムストーン(limestone)
○砂岩(sandstone)
主に砂が続成作用により固結してできた岩石で、堆積岩ではもっとも有名な岩石です。その堆積層に沿って剥離するように採掘され、石材表面が自然に凹凸となるのが特徴です。
主な使用部位:内部壁
代表的な石種:ホワイトサンドストーン、レッドサンドストーン
○凝灰岩(tuff)
○粘板岩(slate)
建築で石材が使用される部位
○外壁・外床
建築に使用される石材の中で、もっともボリュームがあるのが「外壁」です。現在では大規模なビルの外壁4面を総石貼とするような建物は稀ですが、低層部分の使用であっても大きなボリュームになることがあります。
外部なので基本的には御影石の使用をお勧めしていますが、物件によっては大理石やライムストーンを使用した実績もあります。(※安全性や石材表面の経年劣化等の注意を十分に考慮いただいた上でのご採用となります。)
【考慮すべきこと】
・外部で雨がかかる部分の為、大理石やライムストーンなどの吸水率の高い石は使用を避ける
・高さのある壁を石材で施工する場合は耐風圧に対する石の大きさや厚みを検討する
・大きな面で石材を使用する場合は大量の材料の色や柄の許容範囲や範囲分けを行う
○内壁・内床
建築仕上材の中でもっとも石材が好まれる部位です。特に商業施設やホテル等、建物の顔となるエントランス部分には大理石が使用されることが多いです。意匠性の高い石や、表面仕上に凝ったもの等、その建築のこだわりを石材で表現していただくことが可能です。
○外構
建物の外構部分に使用される石材は床石や植栽の立上り、笠石からモニュメントまで多岐にわたります。主に使用されるのは御影石ですが、乱形材としてクォーツサイトや凝灰岩を用いての舗装や、小端石を積んだ塀や立上りなどがあります。車寄せなどの車両が通行する場所はピンコロ(キューブ状の石材)を敷き詰めて割れを起こしにくするなど、不具合を起こさないようにすることも重要です。
【考慮すべきこと】
・外部で雨がかかる部分の為、大理石やライムストーンなどの吸水率の高い石は使用を避ける
・車両などが通行する可能性がある場合は石割を小さくしたり石厚を厚くするなどの対応をする
・床面に使用する場合は表面からの雨水の染み込みや裏面の水分の化学反応を低減し美観を保つための保護剤を検討する
○住戸内 玄関・キッチン
特にマンション住戸などは玄関のタタキ部分の床・巾木・框に大理石を使用することが多いです。また、システムキッチンの天板に石材を使用していただくことも多く、こちらは基本的には御影石が使用されています。近年では石英を原料とした人工大理石や天然石調の大判タイル等、様々な材料が使用されています。
【考慮すべきこと】
・内部の床に使用する場合は重量と貼代を確保し、割れが起こらないよう設計をする
・キッチンや浴槽、洗面台などの水回りに採用する場合は吸水率の高い石材の使用は避ける
給水率の低い石材であっても撥水処理や防汚処理等の処理剤を検討する
・人の手に触れる部分に使用する際はエッジの形状を壊れにくい、傷つきにくい形状を選定する
石材の比重、強度、吸水率とは?
比重、強度、吸水率は石材の強度や使用部位を判定する為に必要な情報です。
○見掛比重
見掛比重とは水と比較したときの石材の密度(単位堆積当たり質量)です。建物を設計する際の重量の目安を把握する際の指標として用いられます。一般的に大理石であれば約2.7、御影石は約3.0を平均値としていますが、それぞれの石種ごとに数値は異なります。
○曲げ強度(N/mm2)
曲げ強度とは石材の曲げ方向に対する耐力を表します。建物の外壁に石材を使用する場合はそれぞれの石材の曲げ強度の数値を基に、風荷重に対して石材の大きさ、厚み等を計算し設定することが必要です。
○吸水率(%)
吸水率は石材がどの程度水分を吸収するかを率で表した数値です。乾燥質量から吸水質量を引いたものを乾燥質量で割り返した割合で、数値が高いほど水と吸い込みます。内外部での使用の際の指標であったり、水が常にかかる部位(洗面、浴室等)への使用の可否の判断に使用されます。
○硬度(Hs)
硬度は石材の表面の硬さを示す数値です。数値が高いほど硬い為傷がつきにくなります。御影石は約90~100、大理石は約50を示します。一般的に焼き付けた鋼材(鋼など)の硬さが100といわれています。飲食店舗のカウンターやテーブル等は硬度が高いものをお選びいただくことが望ましいです。
石材の状態と施工への影響
石材に内包される物質的な組成が強度への影響を及ぼす場合があります。
特に以下のような箇所には注意が必要です。
○クラック
石材はその形成された地盤の近くの動きによって影響を受けます。地震などの揺れに対して堆積層がずれたり、別方向への圧力により断裂した場合、クラック(ひび割れ)が内包されている場合があります。石材を切断、加工をしている最中にクラックに沿って割れたり、施工を行った後に割れる可能性がある為、除去しなければなりません。